玲二の日々 1時間目
僕の家は母子家庭だ。
母子家庭といってもかあさんはとっくの昔に出て行ったきり帰ってきていない。8歳上の兄ちゃんとずーっと、2人で暮らしてきた。
僕は中学に上がり、ちょっとやんちゃな友達と付き合いだしていた。
友達になった風太も母子家庭らしく、母親は朝から晩まで仕事で家にいないと言っていた。
「俺たちってかわいそうだよな」と風太は笑っていた。
今まではかわいそうと言われると腹がたったけど、風太に言われるとなんだか安心した。
「玲二、明日からテストじゃん?」
「うん。」
「2時間で終わるしどっか遊びに行こうぜ!ゲーセンとか。」
「えっあー…うん!いいね。」
テスト勉強しなきゃ…とも思ったけど、なんだかそれってダサい気がした。
テスト期間中にゲーセンに行くなんて、ドキドキするけど楽しそう!
勉強は帰ってきたからすればいい。
テスト初日、理科と国語。
理科は満点かもしれないと思えるくらいにはできた。
国語も自信ないところはあるけれど、全部埋めることはできた。
「玲二、行こうぜ!」
「うん!」
「風太、テストどうだった?」
「テスト?どうって、俺、名前も書かずに出したよ。テストってヒマだよなー。」
僕は風太の言うことが信じられなかった。
「えっそんなことしてお母さんに怒られないの?」
「ははは。怒られる?なんでだよ。ははは。」
風太は笑っていた。
家に帰ると兄ちゃんがもう帰ってきていた。
「おかえり、玲二。どこ行ってたんだ?」
「あ、友達の家。勉強してた。」
「そうか。友達と一緒に勉強して集中できるのか?」
「う、うん、教えあったりして、頭に入るよ。」
「そうか。今日の試験はどうだった?」
「うん…できたと思う。」
「よし。明日もそう言えるようにな。」
「はい。」
「ご飯食べたら片付けはいいから勉強しな。」
「はぁい。」
カチャカチャと兄ちゃんが食器を洗う音を聞きながら勉強を進める。
二間しかないこの家は今僕たちがご飯を食べて勉強をしているこの部屋と寝室しかない。
兄ちゃんは勉強にうるさい。
母さんがいないからって勉強しない、だらしのない子にはなるなって厳しく言われている。
「玲二、きりのいいところでお風呂にしな。」
「はい。」
僕は一旦寝室に行きパジャマをもって部屋を出る。
「玲二、今日はお風呂は5分で出なさい。」
「はい。」
始まった。
スパルタモードだ。